『経営者保証ガイドライン』

          内容と要点

1.経営者保証とは

■ 経営者保証とは、中小企業が金融機関から借入を受ける際に、経営者やその家族が会社の借入の連帯保証人になる事です。

 

■ これまで、中小企業が金融機関から借入を受ける際には、経営者個人が債務を保証(会社が返済できない場合に、経営者個人が会社に代わって返済しなければならないこと)しなければならなかった。

 

■ そのために、経営者やその家族は個人の土地や建物、生命保険等の財産を現金化して返済に充てなければならなかった。

 

■ 経営者はそのような保証を負うことになるため、成長が期待できる機中小企業であっても、借入をして事業拡大をすることに躊躇する傾向がありました。また、事業承継において、借入の経営者保証を後継候補者が承継することに躊躇し、事業承継が阻害されるというケースも見られました。

 

2.「経営者保証に関するガイドライン」、「特則」とは

■ 経営者保証により、借入による事業拡大の躊躇や事業承継の阻害要因という中小企業の活力を阻害する要因に対処するために、金融庁と中小企業庁の後押しで、日本商工会議所を一般社団法人全国銀行協会が事務局となり、者保証に関するガイドライン」が2014年4月から運用開始されました。

 

3.「経営者保証に関するガイドライン」のポイント

会社と個人が明確に分離されている場合は経営者保証を求めない

②個人保証が実行された際に、多額の個人保証を行っていても、早期に事業再生や廃業の決断をした場合には、一定の生活費等を残す

③保証債務の地工事に返済しきれない債務残額は原則として免除する

 

■ また、2019年6月には、経営者保証が事業承継の阻害要因とならないように、経営者と後継者双方からの保証の二重徴収を行わないこと経営者ガイドラインの「特則」として制定されました。

 

3.「経営者保証に関するガイドライン」の目的

①経営者保証について合理性が認められる契約のあり方を示すこと

②債務整理を公正かつ迅速に行うための準則を定めること

③債務保証の弊害を解消し、債務者、保証人、及び金融機関の良好な信頼関係を構築・強化すること

④創業や成長、事業承継などに対する中小企業の取組みの意欲を増進すること

⑤中小企業の活力が一層引き出され、日本経済の活性化に資すること

 

4.要点1.~適用対象~

中小企業の借入であること

借入れをした中小企業の経営者個人が保証人であること。

(実質的な経営権を有している者や営業許可名義人、経営者の配偶者、事業承継予定者も含まれる)

③借入をした中小企業と保証人である経営者が返済について誠実であり、金融機関の求めに応じて財務状況などを適切に開示している事

 

5.要点2.~経営者保証なしで借入を受ける条件~

会社と経営者の関係が明確に区分・分離されていること

 ✔会社の業務や経理、資産管理などについて、会社と経営者個人の関

  係を明確に区分・分離している事

 ✔役員報酬や役員賞与、配当、経営者への貸付などの会社と経営者と

  の資金取引を社会通念上適切な範囲を超えないようにするための体

  制を整備し、適切に運用すること

 ☛このような体制の整備・運用の状況について、公認会計士など外部

  の専門家に依頼して検証を行い、その結果を金融機関に対して適切

  に開示することが望ましい

 

会社の資産・収益で借入返済が可能であること

 ✔会社の財務状況や経営成績の改善を通じて会社の返済能力の向上

  どにより会社の信用力が強化されていること

 

経営の透明性が確保されていること

 ✔金融機関からの情報開示に求めに応じて、会社と経営者個人の資

  産・負債の状況や、事業計画、業績の見通しとその進捗状況などに

  関して、信頼性の高い情報を適切かつ丁寧に開示・説明すること

 ☛開示・説明する情報は、公認会計士などの外部専門家による検証

  行い、その検証結果と合わせたものであることが望ましい

 ☛事業計画や業績見通しなどに変動が生じた場合は自発的に報告する

  など適時適切な情報開示に努めること

 

6.要点3.~借入の際に金融機関に求められる対応~

保証を求めない借入代替的な借入方法を検討する

 ✔経営者保証を求めない融資の検討

 ✔経営者保証を求めない代替的な融資方法の検討

  ・停止条件又は解約条件付き保証契約(※1)

  ・流動資産担保融資(ABL:Asset Based Lending)(※2)

  ・金利の一定の上乗せ

 

※1.停止条件又は解約条件付き保証契約とは

■ 「停止条件付き保証契約」とは、会社が契約書に記載されている「特約条項」に触れない場合は保証債務の効力が発生しない契約の事

■ 「解約条件付き保証契約」とは、会社が契約書に記載されている「特約条項」をみたした場合は、保証債務の効力が失われる保証契約の事

 ☛主な「特約条項」例

 ✔役員や株主の変更などについての金融機関への報告義務

 ✔試算表などの財務状況に関する書類の金融機関への提出義務

 ✔担保の提供などを行う際に金融機関への承諾を必要とする制限条項

 ✔外部を含めた監査体制の確立などによる社内管理体制の報告義務

 

※2.流動資産担保融資(ABL)とは

会社の在庫や売掛金などを担保とする融資方法

■ 金融機関は在庫や売掛金を継続的にモニタリングすることで、会社の経営実態をより正確に把握することができ、信用力の強化につながる

 

②やむを得ず経営者保証を求める場合の対応

 ✔経営者に対して以下のことを丁寧且つ具体的に説明

  ・保証契約の必要性

  ・保証を実行する場合は経営者の資産などを考慮したうえで金額が

   決められること

  ・保証の変更・解除などがあり得ること

 ✔保証金額を全額とせず、保証人の資産、収入、物的担保の設定状況

  などから適切な保証金額を設定し、「証債務履行時には経営者保

  証ガイドラインに即して適切な対応を誠実に行う」旨を保証契約に

  規定する

 

7.要点4.~既存の経営者保証を見直すことができる~

■ 上記「5.要点2.~経営者保証なしで借入を受ける条件~」に当てはまる会社は、将来にわたってその経営状況を維持することに努めることを条件に、すでに締結済みの経営者個人に対する経営者保証契約を見直すことができる 

■ 会社から既存の経営者保証契約の変更や解除などの申し入れを受けた金融機関は、経営者保証の必要性や適切な金額などについて「真摯かつ柔軟に」検討を行い、その結果について「丁寧且つ具体的に」会社に説明することとされています

 

8.要点5.~事業再生や廃業などの際に認められること~

一定期間の生計費や、華美でない自宅を残すことを金融機関に申し出ることができる

 ✔「一定期間の生計費」とは、標準的な生計費とされる「月額33万

  円」に、雇用保険の給付期間である「90日~330日」をかけ合わせ

  た額が参考とされます

 ✔自宅兼店舗などで経営者と会社の資産分離が難しいケースでは、

  「事業を継続するために必要な華美でない自宅」について金融機関

  が検討します

 

専門家の支援を求める

 ✔保証債務の公正な整理手続きが担保されるように、弁護士や公認会

  計士など外部の専門家から支援を受けることができます

 ✔具体的には、助言や残存資産の範囲の決定、弁済計画の策定など

  です

 

③経営者保証の免除や引き続き経営に携わる可能性があること

 ✔金融機関が、一定の合理性があると判断する場合は、経営者個人の

  保証債務が免除されたり、経営者が引き続き経営に携わることが認

  められる可能性があります

 

9.「特則」~事業承継をするうえでより有利な内容~

2019年「事業承継に焦点を当てた『経営者保証に関するガイドライン』の特則」が策定された経緯

■ 中小企業庁の調査によると、事業承継において後継者候補が事業の承継を拒否する理由の6割が「経営者保証」と言われています

■2018年に事業承継税制が大幅に改正され、事業承継時の相続税・贈与税の負担がゼロになったにもかかわらず、依然として事業承継が進まないのは、「経営者保証」が大きなネックになっていると言われています

■「経営者保証に関するガイドライン特則」は、事業承継についてのネックを解消することを目的に策定され、事業承継後継者に対する経営者保証の負担を大幅に軽減する内容となっています

 

②特例の要点

ⅰ)要点1.~前経営者と後継者の個人保証の二重徴収の原則禁止~

 ✔前経営者と後継者の双方から二重に個人保証を徴収することを原則

  禁止しています

 ✔現状

  ・二重徴収は全体の2割弱

  ・後継者が経営者保証を提供するケースは6割弱

 ☛二重徴収の原則禁止により、後継者による経営者保証の負担は軽減

  される

 

ⅱ)要点2.~後継者との保証契約は柔軟に対応~

 ✔後継者に経営者保証を求めることが事業承継のネックになっている

 事を考慮し、後継者に対する経営者保証については柔軟に対応するこ

 ととされています

 ✔上記「5.要点2.~経営者保証なしで借入を受ける条件~」に則して

  保証契約の必要性を改めて検討する

 ✔上記「5.要点2.~経営者保証なしで借入を受ける条件~」を満たし

  ていない場合でも、総合的な判断として経営者保証を求めないで対

  応出来ないかを真摯かつ柔軟に検討

 

ⅲ)要点3.~前経営者との保証契約を適切に見直す~

 ✔前経営者の個人保証を適切に見直すことを金融機関に求める

 ✔特に、取締役などの役員でもなく、議決権の過半数を有する株主で

  もない前経営者の対する個人保証は慎重に検討

 

ⅳ)要点4.~会社に対して具体的に説明する~

 ✔金融機関は、経営者の保証契約が必要なケースでは、保証契約が必

  要な理由やどうすれば保証契約の変更・解除ができるかを具体的に

  説明

 

ⅴ)要点5.~金融機関の内部規約整備などによる手続の整備~

 ✔金融機関は、ガイドラインの特則に沿った対応ができるように、

  内規程やマニュアルなどを整備し職員に周知する

 ✔上記社内規程やマニュアルを整備する際は、経営者保証に依存しな

  い借入をさらに進めるために判断基準や手続きを具体的に定める